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2009年 03月 20日
−道徳的債務者との別れ− 9−7 ,韓国を語る前に①
7.「帰化」制度の問題点  
(1)帰化と市民権の獲得
 「帰化」とは,一般に「他国の国籍を得ること」と理解きれている。事実,国語辞典の多くにはそのように記述されている。しかし,本来の意味は「君主(日本の場合は天皇)の徳に感化されて付き従うこと」である。古代の朝鮮半島からの移住者については,当時の事実関係から考えて,天皇の徳を慕って移住してきたとは言い難く,近年では「渡来人」という言い方が定着している。

 しかし,近代以降,日本国籍の取得については依然として「帰化」といい,単なる国籍取得を越えて,「日本人化」を当然の理とし,日本的姓名が強要されてきた。英語での「帰化」に相当する言葉は Naturarization であるが,これは「その国に生まれた人と同じ権利=市民権を取得する」という意味である。当然のこととして,「帰化」する以前の固有の民族的文化の放棄は強要きれていない。むしろ出自に関わる文化については人為の所産でしかない国家が関与すべきことではないのである。

 したがって,国籍の取得は,その地に生まれ育った人問がもつ権利(=市民権)と同じ権利を取得するというだけのことであるから,固有の民族性と文化を捨てて,他民族の民族性とその文化に同化しなけれぱならない理由は何もないし,ましてや日本的姓名の強要は克服されるべき偏狭な国粋主義でしかないのである。

(2)帰化制度の問題点
 国籍法第4条による帰化の要件は以下の6点である。
  1 引き続き5年以上日本に住んでいること
  2 20歳以上で本国法によって能力を有すること
  3 素行が善良であること
  4 独立の生計を営むに足りる資産または技能があること
  5 国籍を有せず,又は日本の国籍を取得することによってその国籍を失うべきこと
  6 (暴力で日本国政府を破壊することを企てたことがないこと)

 帰化申請に必要な書類は,「国際結婚ハンドブック」(明石書店)によれぱ以下の14種類である。
  1 帰化許可申請書
  2 帰化の動機書
  3 履歴書
  4 宣誓書
  5 親族の概要を記載した書面
  6 生計の概要を記載した書面
  7 事業の概要を記載した書面
  8 自宅・勤務先付近の略図
  9 在勤証明書・在学証明書・成績証明書・就業証明書
  10 国籍証明書
  11 旅券
  12 出生証明書(本国の戸籍謄本を日本語訳者名を記した日本語訳したもの)
  13 親族関係証明書(本国の戸籍謄本を日本語訳者名を記した日本語訳したもの)
  14 外国人登録済証明書

 田駿のいう「民族的侮辱」のひとつは,第2の創氏改名を強制する窓口の指導とプライパシーの全面開示のことである。上記「帰化許可申講書」には「帰化後の氏名」欄があり,現在でも「帰化」後の姓名について日本的姓名を名乗るよう,強制にも近い指導がなされているという。

 日本人の場合の出生届けの時の姓名の制限が「人名漢字表」に記載があるかどうかだけであって,その読み方の制限すらないことを考えると,「帰化」にあたって,なぜ日本的姓名への「創始改名」か強要されるのか,理解しにくいことである。他国にはそのような例はあるまい。国籍の収得が「その地に生まれ育った人問と同じ権利」以下であってはならないのである。ついでに言えば,国籍取得にあたって,それ以前の国籍を放棄することを前提としているのは欧米先進国にはない。

 また,「生計の概要を記載した書面」については,家計簿の如き支出の明細,所有する不動産・預貯金の全容・主な家具等まで明らかにしなけれぱならない。平均的日本人を前提としてもここまでプライバシーを全面開示する必要があるのか疑問である。日本での居住年限の制限はやむを得ないとしても,独立して生計を営むことができているかどうかは「就業証明」あるいは「所得証明」以上に必要であろうか。

 かつて植民地支配を通じて,日本人であることを強制され,言葉を奪われ,創始改名によって名前を奪われた在日韓国・朝鮮人にとって,現在の「帰化」(断じて「国籍取得」ではない)制度は第2の創始改名にも見えるのではないだろうか。在アメリカ韓国人(約百万人余)にはアメリカ国籍を取得すること(市民権の獲得)にためらいがあるのだろうか。日本的姓名の強要は,日本の植民地支配(日帝36年)を戦後一貫してあいまいにしてきたこの国の歴史認識の貧困さと「帰化」と「市民権の獲得」の違いからくるものなのである。

 戦後,半世紀以上にわたって他国(日本)に定住してきた外国人(韓国朝鮮人)が定住いている国(日本)の国籍を取得していないということは世界的に見てもほとんど例がない奇異な事ではないだろうか。

【補注】
 今月の24日に在日韓国人の法的地位及び待遇に関する日韓局長級協議が東京で開催され,在日韓国人の日本の外国人登録法および出入国管理法に関する法的地位と,教育問題など社会生活上の処遇などについて包括的に話し合われるという。

 この協議は1991年以来,毎年開催されている。こうした協議が必要とされるのも,日本の植民地支配をこの国がなお未総括のままであるからのように私には思われる。

by gakis-room | 2009-03-20 10:24 | 韓国を語る前に | Comments(4)
Commented by saheizi-inokori at 2009-03-20 11:55
初めて知ったことです。
不当をなじるのは声になっているのでしょうか。
政府の公式回答はどういうことなんだろう。
Commented by gakis-room at 2009-03-20 17:56
saheiziさん,
「不当をなじる」には「帰化の不許可」を覚悟しなければなりませんから,これはとても大きなリスクかと思われます。

日本的姓名の強要については最近は少なくなっているのかも知れません。「6.「在日」と永住について」の補注で書いたように,白眞勲参議院議員は韓国名(読みは「はくしんくん」)のままで国籍取得しています。もっとも彼は朝鮮日報日本支社長でしたから,彼の場合には「窓口指導」がなかったのかも知れません。
Commented by YUKI-arch at 2009-03-21 04:19 x
「帰化」の歴史的、政治的意味について、まったく無知でした。
一つの言葉がもっている政治性、歴史性に驚きながら。
Commented by gakis-room at 2009-03-21 09:48
YUKIさん,
言葉ではありませんが,スポーツ大会の開会式時の宣誓で,ナチス式敬礼(実は古代ローマ軍のやり方)を平気でやっているみるとおぞましく思えてきます。


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