2009年 03月 10日
5.「反日」について (2の1) 韓国旅行から帰ったあと,何人かから聞かれたことがある,「韓国に反日感情はなかったですか」と。こんな時,たいてい私は「よく分かりません」と答えることにしている。実際,このようにしか答えれないのである。私の旅行体験の中では反日感情に出会ったことはない。考えてみるまでもなく,短期の観光旅行者が相対する韓国人は,その場所がどこであれ,客である日本人にわざわざ気まずい思いを作り出す必然性がないからである。 また,私のふるまいをなりを見て,韓国人同士が「この日本人め」(韓国語で言えぱ,チョッパリあるいはウェノムであろうか)とささやきあっていたとしても,言葉のできない私には聞こえない。また,ひとつふたつの私的な体験をもって全体であると断定することは私の流儀ではない。 しかし,「反日感情はあるに決まっている」と私は思っている。彼の国はその長い歴史(しばしば五千年の歴史といわれるが,これは壇君神話から数えてのこと)の中で,頻繁に侵略にさらされてきた。時には,隋の煬帝の軍30万を撃破した乙支文徳,唐の太宗の親征を退けた淵蓋蘇文,契丹軍20万を壌滅させた姜邯賛,そして文禄・慶長の役の李舜臣など救国の英雄によってその侵略をはね返えし,そうでない時でも中国と事大関係を結ぶことによって独立を維持してきた。 唯一その独立を喪失したのは紀元前107年の漢の第七代皇帝武帝による衛氏朝鮮征服を除けば,日本の植民地支配の36年間だけである。武帝の時代はいまだ朝鮮半島に統一国家はなく,なによりも紀元前のことである。そして日本の植民地支配は,今世紀のことである。植民地時代を経験した父と母の,祖父と祖母の,あるいは近い肉親の生々しい体験は日常のおりあるごとに生の声で語り継がれているに違いない。 日本の植民地支配の36年間は,だだ単にその独立性を喪失しただけでなく,日本語の強要,創氏改名,強制連行を含め,固有文化が奪われた36年問であつた。この無念さは,戦後の日本政府の植民地支配にたいする一貫した逃げの姿勢あるいは非道徳性によって増幅されてきたのである。だからこそ,文民政権として登場した金泳三大統領は1995年11月,江沢民との共同記者会見で当時の江藤総務庁長官の「妄言」に触れ,一国の大統領として「今度こそは文民政権の堂々とした道徳性に立脚し,ヤキをいれてやる」とまでいってしまうのである。 1910年から始まる日本の植民地支配は,韓国では1592年の文禄・慶長の役と三百年問を越えて連続しているように思われる。その象微が小学校に建てられているという李舜臣の銅像と小学校4年の国語教科書に収録されいる柳寛順の物語りであろう。 言うまでもなく,柳寛順は16才で三・一独立運動に参加し,獄死した国民的英雄である。彼女が在籍した梨花女子高校には,「柳寛順記念館」と名付けられた講堂があり,2階のフロアーには彼女に関する多くの資料が常時展示されている。また,小学校3年の音楽教科書では, はるか3月の空を仰げば 寛順姉さんを思いだす 囚われてもなお万歳を叫び 青空あこがれ息絶えた と掲載されている。 【補注】 「5 『反日』について」の部分は120行を超えているので,ブログであることを考えて2回に分けた。なお,これまでも読みやすくするためにブログでは多くの段落を用いている。
by gakis-room
| 2009-03-10 09:44
| 韓国を語る前に
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Comments(4)
「反日感情はあるに決まっている」
僕らの振る舞いがどこかぎこちなくなったとしても、 そういう引き締まった気持ちで、 謙虚に歴史を乗り越えていかないといけない。
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gakis-room at 2009-03-11 07:43
YUKIさん,
私の場合はそのぎこちなさを超えるための歴史学習であったように思います
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saheizi-inokori at 2009-03-11 12:16
今日本の小学生が日本の偉人を歌うことってありうるのだろうか。
あるとしたら誰の歌なのかな。
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gakis-room at 2009-03-11 12:33
saheiziさん,
柳寛順が偉人であるのは「救国の英雄」であるからのように思われます。そして幸か不幸か日本には「救国の英雄」なるものは存在しませんでした。 |
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