2007年 05月 07日
新憲法制定議員同盟等の「新憲法前文案」の大嘘と醜い日本語
「新憲法制定議員同盟」(会長・中曽根康弘元首相)と「新しい憲法をつくる国民会議」(会長・愛知和男元防衛庁長官)は,3日に共催した「新しい憲法をつくる国民大会」で「新憲法前文案」なるものを発表しています。4日の産経新聞にその全文が掲載されていました。それは次のような書き出しから始まっています。

「日本国民は,悠久の歴史の中で,天皇を国民統合の象徴として戴(いただ)き,和を尊び,多様な思想や生活信条をおおらかに認め合いつつ,独自の伝統と文化を作り伝え,多くの試練を乗り越えて発展してきた。…」

中曽根氏は,「国民大会」で「首相がいう美しい国の憲法は美しい前文を持たないといけない。自民党新憲法草案の前文は,歴史や文化を飛ばした法規集のようだ」と述べていますから,この「前文案」は「歴史や文化」を踏まえた「美しい前文」ということになるでしょうか。私の感想は,「よくもまあ,これだけの大嘘をしゃあしゃあと言えたもんだ」の一言に尽きます。

天皇が国民統合の象徴になったのは現行憲法からです。「おおらか」であるかはともかくとして,「多様な思想や生活信条」が認められるようになったもの現行憲法からです。それをこの国の「悠久の歴史」の中での特徴とするのは,全くの無知でなければ悪質な「大嘘」です。

天皇についてみれば,1889年に大日本帝国憲法が公布されてから現行憲法が施行された1947年5月3日までのおよそ60年間は,国民が「象徴」として戴いたのではなく,この国の唯一の主権者,絶対的な不可侵の存在としての天皇を強いられた60年間でした。そして,これに異議申し立てをする思想は認められもしませんでした。

さらに遡れば,平氏・源氏の武士政権以降の800余年は,後醍醐天皇期の短い期間を除いて,天皇は一部を除けば民衆とは全く無縁でした。そして,徳川幕府による1615年の「禁中並公家諸法度」以降の250余年は天皇は御所内に封じ込まれました。つまり,明治以前の日本歴史の中での天皇とは,民衆から見れば,平氏政権以前は支配者であり,平氏政権以降は無縁であるかのどちらかでしかありませんでした。これらのことは中学校の歴史教科書程度の常識です。

小さなことのようですが,伝統と文化を「創り」ではなく,「伝統と文化を作り」とする日本語の醜さにはただただ呆れる以外にはありません。
[PR]

by gakis-room | 2007-05-07 18:01 | つれづれに | Trackback | Comments(10)
トラックバックURL : http://gakisroom.exblog.jp/tb/5348851
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
Commented by 生徒 at 2007-05-07 22:47 x
いつもいつも感心してます。勝手に先生と呼んでます。
先生の発言にはなんだか胸がすっきりするおもいがあります。
そしてもっと身近に日本の歴史、社会の出来事などを聞きたいな~~と思います。

中学高校の時、もっと勉強したらよかった。
Commented by gakis-room at 2007-05-08 07:37
生徒さん,「先生」だなんて,なんとも面はゆい。gakiで十分ですのに。
>中学高校の時、もっと勉強したらよかった
それはお互い様です。この歳になっても勉強不足が痛感されます。
Commented by saheizi-inokori at 2007-05-08 10:35
悠久の歴史、も鼻白みます。日本という国が出来上がるのはそんなに昔のことではないでしょう。神武天皇を実在とでもするなら別ですが。
おおらかに多様な思想を認めることを誇らしげに言う人たちが実際には統制を進めようとしているのですから!
Commented by Count_Basie_Band at 2007-05-08 11:48
>神武天皇を実在とでもするなら別ですが。

「実在」とする説でもせいぜい古くて西暦紀元前1世紀。つい先日ですなぁ。
それに中曽根ってオッサン、現職総理の時、日本国民には琉球民族やアイヌ民族が含まれることを知らず、世界の笑いものになりました。私の外国人の友人たちは、あんな男は死刑に値すると言っていました。行政のトップが自国の民族構成を知らなければ死罪に値すると言っていました。
いまはわかってるのかなぁ。
Commented by YUKI-arch at 2007-05-08 12:45 x
美しいという日本語を聞くと、ゾーとするようになった。
50年後には、
広辞苑に
「国民をペテンに掛けるときに
為政者が使う最も醜悪なことば」
と定義されていることでしょうね。
Commented by gakis-room at 2007-05-08 19:17
saheiziさん,手元の「新明解国語辞典」では,「悠久」は「想像もつかないほど遠い過去からの変わらずに続く様子」とありました。神話によれば,神武の即位はBC659年ですから,2666年前です。韓国神話では,檀君(タングン)の即位はBC2333年,4340年前です。これ位になると「悠久」と言えそうです。
Commented by gakis-room at 2007-05-08 19:26
Count_Basie_Bandさん,大勲位ドノは未だにわかっていないとおもいますよ。
Commented by gakis-room at 2007-05-08 19:29
YUKI-archさん,「美しい」の定義,いいですねえ。気に入りました。ついでに「2006年頃から,使われだした」と付け加えたくなりました。
Commented by Count_Basie_Band at 2007-05-09 11:01
>大勲位ドノは未だにわかっていないとおもいますよ。

そのようですね。
「国際政治学者」を名乗るヤツまでが、人種、民族、国籍の三概念を峻別しないのも許せませんなぁ。

琉球民族は九州以北とは明らかに異なる文化を育んできたのであり、アイヌの人たち至っては文化以前にまず人種が異なること、そしてこれらの人々が未だに差別を受けていること無視してことを進めようとしているのは重大な犯罪です。

そいう連中に限って、大多数の中国人、そして朝鮮半島の人々を「異人種」と表現したりします。我々と同一人種で、家系と文化が違うだけだという事実をも無視します。
Commented by gakis-room at 2007-05-09 20:19
Count_Basie_Bandさん,人種と民族の混同,はては国籍までごっちゃにしてしまっています。「日本民族」は,人種的には「原日本人」(縄文人?)と南方系とアイヌ系と朝鮮半島系との「純粋雑種」だろうと思っています。朝鮮半島系との関係で言えば,漬け物がお新香とキムチにまで違ってきた,これが民族なんだと思っています。


<< ハルジオンが見えるようになりました      きようは立夏ですが… >>