2007年 05月 04日
自民党の「新憲法草案」を読んでみました・その2
私が自民党草案を思想の貧困というのは,自民党草案には民主主義,基本的人権の歴史的経緯が踏まえられていないからです。それは,現行憲法の前文と97条,12条と自民党草案の前文と97条,12条を比較してみれば一目瞭然です。

現行憲法の前文は,その表現に日本語としての嘗めらかさにかけるところがありますが,しかし,ジョン・ロックから「ルーズベルトの4つの自由」までの民主主義と基本的人権の哲学を踏まえています。一方,自民党案にはそれは完全に欠如しているだけでなく,独自の思想も哲学もありません。だからこそでしょうか,民主主義と基本的人権についての「素人」ではない「玄人」は,97条はそのまま,12条は前段を現行憲法のそれを引き写しています。

現行憲法・第97条
 この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて、これらの権利は、過去幾多の試錬に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。

このような経緯があるからこそ,現行憲法は12条で以下のように言います。そして,その制限は「公共の福祉」といった最小限なものにしています。
現行憲法・第12条
 この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。

しかし,自民党草案では12条を,多くの場合「自由・権利の保持責任とその濫用の禁止」とされている小見出しを「国民の責務」とした上で,「公共の福祉」は「公益及び公の秩序」として大幅な制限を加えています。
自民党草案・第12条 (国民の責務)
 この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、保持しなければならない。国民は、これを濫用してはならないのであって、自由及び権利には責任及び義務が伴うことを自覚しつつ、常に公益及び公の秩序に反しないように自由を享受し、権利を行使する責務を負う。

自民党草案は。独自の思想・哲学を展開するだけの器量も才覚もない者が,「素人が起草した」と罵倒したそのものを,図々しくも下敷きにして,「自衛軍の保持」と「基本的人権の制限」をちゃっかり付け加えただけのものになっている,というのが私の感想です。「素人」を都合よく剽窃した自称「玄人」というところでしょうか。
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by gakis-room | 2007-05-04 11:33 | つれづれに | Trackback | Comments(0)
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