2006年 12月 02日
思想と感性の貧困・教育再生会議の論議②
教育再生会議の「規範意識・家族・地域教育再生分科会」(第2分科会)は11月29日,来年1月に打ち出す第1次報告「子どもの『心の成長』のために」と題された素案をまとめました。朝日新聞によると素案では以下のような取り組みを提唱しています。

①郷土の歴史や伝統を学ぶ「ふるさとの時間」を授業に採り入れること
②学校で朝10分間の「読書の時間」を必ず設けること
③協力・助け合いの重要性を実感してもらうため体育の時間に「30人31脚」を行う
④全国の小中学生が最高レベルの芸術を鑑賞する機会を与えること
⑤いじめなどを題材とした演劇の鑑賞や演技を通じて「お互いの心の闇や過ち」を理解させること
⑥地域清掃などのボランティア活動も必ず行う

よくもまあ,これだけの思いつきをあげたものだとあきれてしまいます。これらによって「心の成長」が促されるとする「思想と感性の貧しい」委員の「心の成長」こそが議論以前の課題のようです。

また,仮にこれらを真面目に実際に行うとしたら,その準備を含めてどれだけの時間を必要とするのでしょうか。換言すれば,授業時間がどれだけ割愛されるのでしょうか。授業時間を減ずることなく実施するとすれば,子どもと教員の負担はどのようになるのでしょうか。文科省のこの夏の調査によれば公立学校の教員の平均残業時間は2時間強とのことです。

しかも,再生会議全体としての支離滅裂さは,翌30日に発表された「学校再生分科会」(第1分科会)素案をこれに重ねてみれば明らかです。第1分科会では,再生会議として「基礎学力をつけるには授業時間が足りないのではないか,という方向性は一致している」(白石真澄主査談)として以下の2点を提唱しています。
①1日7時間授業や夏休みの短縮などで授業時間を増やすこと
②主要教科の授業を重点的に増やすこと

提唱の是非を論ずる以前に,第1分科会と第2分科会の素案を重ねれば,それだけで実現不可能であることは明白です。これほどの支離滅裂さは机上の空論ゆえに可能なのだと断ずるほかありません。

さらに言えば,第2分科会は先6項目に加えて以下の2項目も提唱しています。
⑦「家族の日」を創設し,家族一緒に夕食を取ること,「両親が子どもに読み聞かせをしたり,子守歌を歌ったりする」こと
⑧子どもに悪影響を与える番組を通報する窓口組織の新設

「家族の日」を創設して,全員で夕食をとることはともかくも,その後段と⑧いたっては,委員の「思想と感性の貧しさ」どころか,委員の「心」は病んでいると思わずにはいられません。
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by gakis-room | 2006-12-02 08:46 | つれづれに | Comments(6)
Commented by saheizi-inokori at 2006-12-02 14:27
「狂っている」か「無くなっている」のかもしれません。
Commented by gakis-room at 2006-12-03 08:15
「醜い国」へまっしぐら,そんな感じです。ため息も出てきません。
Commented by Count_Basie_Band at 2006-12-04 15:07
>家族一緒に夕食を取ること

これが不可能な家庭も少なくないと思いますよ。
今に始まったことではありません。
昔から繁華街では夕飯は子どもたちだけが当たり前。

こんなことを「公」が言うと新たな問題に繋がるのではないでしょうか。
Commented by gakis-room at 2006-12-04 15:46
4月15日の「国家が土足で入ってくる」で書いたように,「家族の日には全員で夕食をとれ」なんて,そのような私事に国家が介入すべきではありません。近代の自由の原則すら分からない人たちが考える「心の成長」に恐ろしさを禁じ得ません。
Commented by Count_Basie_Band at 2006-12-05 08:50
>4月15日の「国家が土足で入ってくる」で

その頃、私はまだブログを持っていませんでしたので、昨日初めて拝読しました。
軍が家庭に土足で踏み込み、家族間での密告が督励された時代を思い出します。私ぐらいまでの世代の皆さんは同じ思いだと思います。
こうした政治姿勢が愛国心を失わせるという「人間の生理」に対する無理解、無知が情けない。
Commented by gakis-room at 2006-12-05 10:02
>人間の生理」に対する無理解,無知がなさけない
そうした者がまるで粘土細工で遊ぶかのように「心の成長」を弄ぶのですから,おぞましく怖さが募ります。


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