2006年 09月 18日
小・中学校も勝ち組と負け組に分けたい・安倍氏の教育改革論
昨日のNHKの討論番組で「教育バウチャー制度」に関わって,安倍晋三氏はこの制度を導入して,学校も勝ち組と負け組に自然淘汰し,負け組には「再チャレンジ」の機会を与えるとの見解を示していました。小中学校へも市場原理を導入しようというものです。

「教育バウチャー制度」は聞き慣れない言葉ですが,簡単に言えば,生徒・児童1人あたりにかかる教育費用の一定額をバウチャー(利用券)として保護者に渡し,保護者は子どもが通いたい学校を自由に選択し,この利用券を学校に提出するというものです。この結果,子どもが多く集まる学校ほど,多くの資金が集まることになります。

生徒の集まらなかった学校,つまりは競争に負けた学校(負け組)へは,しっかりと乗り込んでいって(誰が?),負けた理由を明らかにして根本的に問題を是正していく,こうして良い学校(勝ち組)のノウハウをみんなで共有することによって全体としての水準を高める,というのが安倍氏の所論です。

このような所論を机上の空論といいます。その理由が何であれ「勝ち組」学校にも定員はあるでしょうから,小中への入学あるいは編入学への競争は激化します。こうして市町村単位で,交通の利便性によっては都道府県単位で,小・中学校の序列化はじまり,固定化されていきます。

また,序列のそれぞれの段階で定員枠からはずれた子どもはその段階で,つまりは小学校1年ですでに「負け組」となります。小学校1年で「再チャレンジ」とはおぞましい限りです。「負け組」とされた小・中学校では教育資金不足となり,「勝ち組」学校のノウハウを学ぶどころか,その存続さえ危うくなります。

同席していた麻生氏は,塾と学校へのどちらに行ってもよいとする選択制にしたら,「負け組」学校は教室も空くだろうから「空き教室を塾に貸せは収入の足しになる」と言っていました。これはもう与太話です。

今朝の朝日新聞によると,北陸大学(金沢市)は今秋の推薦入試から全国5200校の高校をすべて「指定校入試」の対象にするとしました。一般に「指定校入試」とは,高校側が推薦すればほぼ合格させるというものです。この大学の学生数は約2800人だそうですから,1学年の定員は約700人です。5200の高校から各1人の推薦があった時はどうするつもりでしょうか。知性を感じさせないという点では,安倍氏,麻生氏に勝るとも劣りません。
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by gakis-room | 2006-09-18 12:31 | つれづれに | Trackback(2) | Comments(27)
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Tracked from 墓の中からコンニチワ at 2006-09-24 05:14
タイトル : 便利な尺度
gakis-room様の「楽餓鬼」で ********************** 韓国でかつてこんな事が言われていたそうです,ノテウ大統領の頃です。一番いいのは能力があって一生懸命にやる大統領,その次は能力はあるが何もしない大統領,3番目は能力もなく何もしない大統領,最悪なのは能力はないのに一生懸命やる大統領。 ********************** という話を教わりました。そこで私が ********************** 「大統領」のところに何でも代入できるところ...... more
Tracked from 平太郎独白録 親愛なるア.. at 2006-10-21 14:39
タイトル : 教員免許更新制導入論議に対する教育の是非。
親愛なるアッティクスへ ここ最近、鬱々として楽しまざる事がありましたので、思い切って、「自分にご褒美」みたいな感じで、結構な昼飯を食いに行きました(笑)。 おかげで、今日はそこら辺の弁当か何かで我慢・・・です。 ところで、安倍政権は、首相の私的諮問機関「教育再生会議」の設置を決定しておりましたが、先日、そのメンバーが決まったというニュースを耳にしました。 まあ、はっきり言って、顔ぶれになどは興味がないのですが、主に、学習指導要領の見直し、教員免許の更新制度、学校・教員の部外評価制度、全...... more
Commented by saheizi-inokori at 2006-09-18 13:09
華やかなりし日教組よ、今こそ立ち上がれ!と檄を飛ばしたくなりますね。まあ、彼らにもここまで教育の荒廃を言われるのには一半の責任無しとしませんが。
Commented by Count_Basie_Band at 2006-09-18 16:35
>このような所論を机上の空論といいます。

余りに幼稚すぎて、妻と二人で大爆笑!
今でも公立小学校の教師が生徒の暴力で負傷したりしてるんですよ。「教育委員会に訴える」と脅迫してるんですよ。教師は抵抗できないんですよ。
「負け組」の学校がどのような場所になるか、誰でも想像できるのに彼らには想像できないんですな。だから「選良」と呼ばれるわけでして...
Commented by 高麗山 at 2006-09-18 16:56 x
誰かの論理に似ていると考えていると、”大栄帝国”の「中内」理論でした。ニ者を競わせ、敗者を切り捨てる!最後に、自らも世論に切り捨てられた、”企業論理”でした!
Commented by gakis-room at 2006-09-18 22:30
saheiziさん,日教組にも,旧総評にも,旧社会党にも自らが権力を掌握したときのマネージメント論がありませんでした。その無惨な象徴が村山内閣であったように思います。個別事項には反対することは得意なんですが,変革のイメージを描けませんから日教組は立ち上がれません(笑)。
Commented by gakis-room at 2006-09-18 22:38
Count_Basie_Bandさん,ふと思い出しました。韓国でかつてこんな事が言われていたそうです,ノテウ大統領の頃です。一番いいのは能力があって一生懸命にやる大統領,その次は能力はあるが何もしない大統領,3番目は能力もなく何もしない大統領,最悪なのは能力はないのに一生懸命やる大統領。
Commented by gakis-room at 2006-09-18 22:44
高麗山さん,その世論がどうも頼りになりません。日ハムの新庄選手を担ぎ出せば票が集められると見くびられているのですから。
Commented by Count_Basie_Band at 2006-09-19 04:46
gakis-roomさん、不勉強にして勧告のその話は知りませんでした。
見事ですね。
Commented by gakis-room at 2006-09-19 10:09
韓国の大統領論,なかなかの出来です。気に入っています。
Commented by saheizi-inokori at 2006-09-19 10:55
しかし、冗談ではすまない。彼らはヤル!
私など学校の・先生の思い出といえばカリキュラムじゃなくて先生の人柄丸出しの脱線だった。
それがクラスのみんなを引っ張っていった。
今の母親は既にそういう授業を知らない。そういう母親が・・悪夢のような循環が想像できる。結局教育基本法を根っこから変える、憲法も変える・・。
Commented by Count_Basie_Band at 2006-09-19 11:25
>先生の人柄丸出しの脱線だった。

そうです。「今日は天気がいいから野外授業にしよう」と言って川原へ行き、授業なんかせずに遊んで帰ってくる、なんてザラでしたし、前夜の夫婦喧嘩の経緯を説明して笑いを取る先生がいたり...

>今の母親は既にそういう授業を知らない。

若い女性の友人から聞いたのですが「箸の持ち方を教えない」と学校へ怒鳴りこみ、学校側が”ウッカリ”「それはご家庭の問題で...」答えたら「教育委員会へ訴えてやる」といきまいた母親を見て驚愕したとのこと。

結局悪いのは誰かわからないままある方向へ進んでいくんでしょうな。
Commented by saheizi-inokori at 2006-09-19 14:04
家庭内の”事件”を語る先生、週刊誌的興味でひきこまれるとすかさず夫婦の責任論とか男の視点と女の視点など、今考えると結構敵もさるものでした。これは中学の先生。
小学校の先生はもっと気ままで『何やりたい?」と聞くこともありました。
Commented by Count_Basie_Band at 2006-09-19 16:07
高校になると「世阿弥」の話しかしない漢文の先生、「カルタゴ」から一歩も時代を下らない世界史の先生、「世界のイワシの分布と生態」の話かしない一般社会の先生等々...
Commented by Count_Basie_Band at 2006-09-19 16:10
>韓国の大統領論,なかなかの出来です。気に入っています。

「大統領」のところに何でも代入できるところが素晴らしいじゃないですか。「社長」「部長」「課長」「校長」「医者」「マスター」「ママさん」「板前」...全部いけますね。
Commented by gakis-room at 2006-09-19 16:25
Count_Basie_Bandさん,saheiziさん,今でも小学校6年間の担任の先生を覚えていますが,中でも4年の時の担任はよく覚えています。最後にアメリカザリガニを食べたのも,午後の授業を近所の小川で行い,そのとき獲ったアメリカザリガニを授業後に食べたのが,アメリカザリガニを食べた最後の記憶です。中学入試を考えなくてもいい,小学校であったからかもしれません。それ以上に,それが許されていた時代だったというだけかもしれません。
Commented by Count_Basie_Band at 2006-09-19 16:30
>小学校1年で「再チャレンジ」

「challenge」の名詞の意味については拙ブログ((8/26)に書きましたが、動詞になると
【他動-1】 挑む、挑戦{ちょうせん}する、(何かの行動に)チャレンジする
【他動-2】 ~を厳密{げんみつ}に調べる、(正当性{せいとうせい}を)疑う、~を問題{もんだい}にする
【他動-3】 ~に異議申し立てをする、~に異議{いぎ}を申し立てる
【他動-4】 ~の意欲をかき立てる
【他動-5】 ~の身柄を拘束する
【他動-6】 ~に盾突く、~に食ってかかる

となります。なんか当て嵌まりそうな...
Commented by gakis-room at 2006-09-19 16:31
Count_Basie_Bandさんが教わった高校の先生のような教員はほとんど「絶滅危惧種」かすでに絶滅しています。

>大統領」のところに何でも代入できるところが素晴らしい
おしゃっる通り,私もあちこちで利用しています。
Commented by Count_Basie_Band at 2006-09-19 16:36
>それ以上に,それが許されていた時代だったというだけかもしれません。

高校時代、生徒にタバコをねだる先生がいました。当直室では、毎晩、当直の先生と、その先生と親しい生徒たちが酒盛りをしていました。校長もPTAも警察も当たり前な顔をしていました。そんな時代もあったのです。
それでも大学進学では県立高校中トップだったのです。
Commented by gakis-room at 2006-09-19 18:50
Count_Basie_Bandさん,challenge にもいろいろな意味があるのですね。ところで,「再チャレンジ」と言うのですから,いちどはチャレンジしたわけです。問題は大したチャレンジでもなく,まあ,いわば成り行きで就職したのだけれど,リストラ(いつの間にか人員整理の意になってしまっています)されたしまった人にとってのやり直しは,始めてのチャレンジということです。そしていまさら,チャレンジといっても,どうしていいかわからないと言うことですかね。ニートも同じです。麻生さんは確かに再チャレンジです。
Commented by gakis-room at 2006-09-19 18:58
>それでも大学進学では県立高校中トップだったのです。
Count_Basie_Bandさんの卒業した高校について,都道府県は分かりませんが,おおよその見当がつきました。バンカラなんて言葉が生きていた時代だったのですね。
Commented by Count_Basie_Band at 2006-09-20 04:45
>バンカラなんて言葉が生きていた時代だったのですね。

ご正解です。旧制ナンバー高校がありました。我々も足駄で通学していました。
Commented by gakis-room at 2006-09-20 10:07
Count_Basie_Bandさん,これで出身が6県に絞れます(笑)。
Commented by 晴天 at 2006-09-20 19:37 x
私は子育て中の主婦です。政治、経済のことはよくわかりません。勉強しようにもほとんどの単語の意味がわかりません。不勉強な私がここに投稿するのは場違いな気がしますが投稿します
でも安部氏が本当にこんなことを考え実行しようとするならとても不安を感じます。何をどう表現したらいいのかわかりませんが、なぜ子供たちの気持ちや現場の先生方の思いがわからないのでしょうか。
私が子供の時はのびのびしたあの生活が「当たり前」と思っていました。
ウチは経済的に豊かでもないし、もう「当たり前」の学校生活は望めそうにもありませんね。
確かに最近の親は何でも先生や学校に責任を押し付けます。学校側も大変なんだと思います。制度を変える必要もあるのだと思います。でもこれは・・・。
問題点がズレた事を言っている気もしますが、なんだかまとまりません。とにかく「勝ち組」「負け組み」ではすくすく子育てができません。
Commented by gakis-room at 2006-09-20 21:21
晴天さん,ようこそ。母親としての不安は,自然なことだと思います。この国が歩もうとする方向には老いた私にも不安です。それは今に始まったことではありませんでした。私が考えてきたことは,と言うよりも私自身を支えてきたことは,国家の力よりも親の力の方が大きいということでした。親が子どもに見せる背に勝る力はないという信仰でした。今では何かにつけて親である私に説教を垂れる娘ですが,私の背だけは見せ続けてきたと思っています。晴天さんのコメントへのコメントとしてはズレているとは思いますが,力を尽くして子育てにいそしんでください。その営み以上のことを国家にできるはずはありません。
Commented by のり」 at 2006-09-20 22:16 x
私も親の力に勝る物はないと信じている一人です。しかし、勝ち負けの社会の中で、今は親自身が疲れ果て自信をなくし、苦しんでいる人がたくさんです。私たちは子どもの姿を見て、とかく親のせいにしがちです。でも、自分が潤っていない時ってやっぱり弱い立場の子どもにあったていくのですよね。勝ち負けの社会になることは親を苦しめ、さらにすべて子どもたちに・・・・
考えると恐ろしい。こうして、このサイトがあることは私にとっても安心でき、自分の立つ位置を確認できる物で、学びの多い場所です。やっぱり小さな事からこつこつと、そして、つながって
声を上げていくことしかないと思っているところです。
Commented by gakis-room at 2006-09-21 17:01
>自分が潤っていない時ってやっぱり弱い立場の子どもにあったていくのですよ
私はいつも決めていました。子どもの前に立つときは,「必ず理性的に思考し,理性的に振る舞う」と。振り返ってみて,果たしてそのようになしえたかは疑問だらけです。でもそのように自分に言い聞かせ,自分自身を叱咤してきました。

また,たとえば,60歳の私のひたむきさと15歳の子どものひたむきさは同質であるとも考えてきました。だから,年長者である私はそのひたむきさにおいて15歳に負けてはならないとも考えてきました。

「私は60歳という条件の中で,自己の最大限を尽くそうとしているのだから,15歳という条件の中であなたも最大限を尽くそうとしてほしい」,こんな語り口調でしょうか。それぞれの条件の中で最大限を尽くす,たとえそれが単なる喘ぎになってもその喘ぎで結びあう人間関係を大切にしたいと思ってきました。
Commented by 晴天 at 2006-09-23 23:36 x
餓鬼さん、のりさん、ありがとうございます。
いろいろ気持ちはあふれてますが、整理がつきません。
ただただ励みになりました。弱い私ではありますが子育て、十分に力と愛情を尽くしたいと感じました。
Commented by gakis-room at 2006-09-24 06:43
晴天さん,教育と子育ては似通っているように思います。教師と子,親と子という関係性の違いはありますが,教育は知識を媒介に子と向き合いますが,子育ては総合的な知恵を媒介に子と向き合います。この場合,私は,教師も親もどのような自分を創りそうとしているのかという自問から始まるのだと考えています。


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