2006年 08月 13日
戦争による死者の変質・靖国神社参拝考1
戦争における死が「戦死」つまりは,「戦場における兵士としての死」と同義語であったのは日露戦争まででしょうか。かの有名な旅順・203高地攻防戦で,日本は1万余の死者を出しましたが,それはすべて兵士としての死でした。

しかし,日露戦争から10年後に起こった第1次世界大戦では,戦争による死者の中に民間人が現れます。それ以降の主な戦争での民間人の死者の割合は以下の通りだそうです。
  戦争による死者の中での民間人の割合
  第1次世界大戦  5%
  第2次世界大戦  48%
  朝鮮戦争     74%
  ベトナム戦争   95%

戦争という国家の行為により死を余儀なくされた者,つまり,戦争に殉じた者を兵士だけに限定することはできなくなっています。空爆を含めた兵器の発達が戦場を無限に拡散したためです。

戊辰戦争以降,太平洋戦争が始まるまでは日本人にとって,戦争における死のほとんどは「兵士としての死」でした。それは戦場が日本領土外に限定され,日本が攻勢を保ち得ていたからです。しかし,太平洋戦争の中途から日本が劣勢に回ると,とりわけ日本領土への直接的攻撃が行われるようになると戦争による死の中に民間人が含まれるようになり,その数は急増します。

政府の公式見解では,1937年の日中戦争(廬溝橋事件)開始以降の戦没者総数は約310万人としています(1963年5月14日の閣議決定「戦没者追悼式の実施に関する件」)が,民間人の死者の割合は分かりません。

「千鳥ガ淵戦没者墓苑」のホームページでは「先の大戦に際し,海外の戦場で戦没された方々は,軍人・軍属で約210万人それに戦火に 巻き込まれて死亡した一般邦人約30万人で,合わせて約240万人」としています。この統計によると民間人の死者の割合は約13%です。

また,別の統計では太平洋戦争による死亡者数は
   軍人・軍属  1,555,308人
  一般国民    299,485人
  総数     1,854,793人
だそうです。東京大空襲を含めた各地の空襲,ヒロシマ,ナガサキを考えると,「千鳥ガ淵戦没者墓苑」のホームページ同様に,民間人の死者の数は少なすぎるようにおもわれますが,それでも死亡者のなかでの,一般国民=民間人の死亡者の割合は16%がです。しかも,これは日本人に限定した数字で,外国人は含まれていません。日本によって死を余儀なくされた外国人の兵士と民間人の数を私は知りません。

いずれにしても,戦争という国家の行為により死を余儀なくされた者,つまり戦争に殉じた者を兵士にだけ限定することの理不尽さはいうまでもありません。私が「平和を祈念し,戦争に殉じたものを追悼するために靖国神社に参拝する」ことを虚偽と考える理由の1つです。
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by gakis-room | 2006-08-13 13:10 | つれづれに | Trackback(1) | Comments(4)
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Tracked from 墓の中からコンニチワ at 2006-08-15 11:26
タイトル : あぁ、バカバカしい。
戦争による死者の変質・靖国神社参拝考1  今年の8月15日は特に騒々しい。小泉が靖国参拝したからだ。  2002年、某誌から頼まれて敗戦頃の想い出を書き綴っている。2か所抜萃する。 **********************  3学期が始まって早々,ある冬晴れの日,ガヤガヤとしゃべりながら下校している途中,後方から爆音が聞こえてきた。振り返ると図鑑で見慣れたグラマンの艦載機である。2年生になると,少なくと男の子たちは,敵味方を問わず,軍用機の機種を見分けられるようになっていた。  1機だけ...... more
Commented by saheizi-inokori at 2006-08-14 15:26
まったく同感です。
生き残った人々の都合でしかないと思います。昨日ぼんやりテレビをみていたら広田弘毅の孫は祖父が靖国に祀られている事を了解していないとか嫌悪感をもっている遺族が紹介されていました。
霊というものがあるとして彼らは今靖国にいたいだろうか?
愛する家族などと一緒にいたいでしょうに。
Commented by gakis-room at 2006-08-14 19:32
そうですね,霊をいまなお家族から引き離して,靖国にとどめおくことの非情さを感じざるをえません。
Commented by Count_Basie_Band at 2006-08-15 12:01
 靖国に祀るのは軍人兵士のはずですが、廣田弘毅は軍人ではありませんね。遺族が了解しなくて当然です。
靖国が勝手に祀った戦死者のほとんどは仏教徒でしょう。皆その家族としてどこかの宗派に属しているでしょう。中には仏教の僧侶もいます。クリスチャンも少なくありません。
 私は霊の存在を信じない方ですが、靖国というのは遺族に対して暴力的無礼を働いていると長年主張しています。いまからでも全遺族の意向を個々に確認すべきです。
Commented by gakis-room at 2006-08-15 23:21
1944年,東条英機は靖国神社に祀られるべき場合を厳格にせよとの通達を出しています。その通達にてらせば,東条英機だけでなくA級戦犯は全員祀られる資格がありません。私には靖国神社は宗教施設ではなく政治的宣伝施設だと思われます。


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