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2016年 03月 11日
各新聞はこの立ち位置から記事を書く,高浜原発運差し止めの福井地裁決定
大津地裁は9日,この1〜2月に再稼働した関西電力の高浜原発(福井県高浜町)の3,4号機について,「安全性の証明が不十分」として運転差し止めの仮処分決定を出しました。関西電力は10日から停止作業に入りましたが,決定の取り消しないしは効力の一時的な執行停止を地裁に求める方針です。それらが認められない限り,今回の運転差し止めの法的効力は継続されます。

なお,4号機は再稼働後の2月末に変圧器のトラブルのため緊急停止し、冷温停止の状態となっています。

フクシマを中心とする「3.11」の直前に出された地裁決定にいて,各新聞の原発に対する立ち位置がはっきりとしました。「3.11」,原発,原子力行政関連の記事はこの立ち位置からの記述です。

産経新聞 「高浜原発差し止め 常軌を逸した地裁判断だ」
地裁決定の何が「常軌を逸し」ているか,その理由を「高度に専門的な科学技術の集合体である原子力発電の理工学体系に対し、司法が理解しきったかのごとく判断するのは、大いに疑問」であるとしています。そして,「この決定は1日も早く取り消される必要がある」と言います。なぜなら「4月からの電力小売り自由化を目前に、関電の供給計画は全面見直しを余儀なくされ、予定された電気料金の値下げも困難になる。近畿圏での企業活動や生活にマイナスの影響が出るのは避けられない」からとします。

読売新聞 「高浜差し止め 判例を逸脱した不合理な決定」
ここで基準となる判例とは,1992年の四国電力伊方原発訴訟へに対する最高裁判決のことで,判決は原発の安全審査は「高度で最新の科学的、技術的、総合的な判断が必要で、行政側の合理的な判断に委ねられている」としています。それにもかかわらず,「高度な専門性が求められる原発の安全性の判断で、司法は抑制的であるべき」なのに,判例を逸脱したといいます。

毎日新聞 「高浜差し止め 政府も重く受け止めよ」
「高浜3、4号機は新規制基準に基づく原子力規制委員会の安全審査に合格した。今回の決定は、新基準自体に合理性がないとまでは述べていない。しかし、合格したとしても、それだけで安全性を保証したものとは言えないという考えを示した」とした上で,その背景には福島原発事故の原因究明が不十分との認識がある。規制委がその不十分性を容認しているのであれば「新基準にも不安を覚える」と指摘した。その上で、具体的な疑問に対し、電力会社による明確な説明や証明がなければならないと事実上の立証責任を負わせた。

朝日新聞 「原発事故から5年 許されぬ安全神話の復活」  Web上では150字/1911字しか見られません。
フクシマ以降「5年のうち約2年一カ月は国内の原発がすべて止まっていた。当初心配された深刻な電力不足や経済の大混乱は起きず,どうしても必要な原発はさほど多くないことがわかった」としたうえで,「なのに再稼働の条件は厳しく設定すべき」なのに「専門家をうまく使い,事故前のように仲間内できめようとしているのか。疑念が膨らむ」と政府と電力会社に疑念を表しています。

東京新聞 「高浜原発に停止命令 フクシマを繰り返すな」  東京新聞の社説は中日新聞と同一です。
「原子力発電所による発電がいかに効率的であり、コスト面では経済上優位であるとしても、その環境破壊の及ぶ範囲は我が国さえも越えてしまう可能性さえある。単に発電の効率性をもって、これらの甚大な災禍と引き換えにすべき事情であるとは言い難い」と「言い切った」に地裁決定を「司法の良識を見たようである。住民の安堵(あんど)の声も聞こえてくるようだ」としています。

なお日本経済新聞は社説では直接触れてはいませんが,「3.11」関連の3日連続(?)の社説です。
「柔軟な発想で被災地の自立めざせ」(10日),「原発事故に向き合う姿を世界に」(11日)

by gakis-room | 2016-03-11 18:00 | つれづれに | Comments(0)


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