2013年 08月 01日
根底にあるのは歴史への無知のようです,麻生発言
先ずは29日の「国家基本問題研究所」(櫻井よしこ理事長)での月例研究会での麻生発言から。

「ある日気づいたら、ワイマール憲法が変わって、ナチス憲法に変わっていた。誰も気づかないで変わった。あの手口に学んだらどうかね」

これだけの中に2つの事実誤認があります。歴史への無知といってもいいかもしれません。
一つは「ナチス憲法」なるものがドイツに存在したことはありません。また,歴史用語としての「ナチス憲法」もありません。「ナチス憲法」は麻生氏の完全な造語のようです。ワイマール憲法がその効力を事実上の喪失するのは,1933年3月23日,全権委任法(授権法)が成立してからです。全権委任法は全5条からなる短いもので,特に「政府立法が憲法に優越する」(第2条),「法令認証権は(それまでの大統領から)首相が持つ」によってヒトラーの独裁が始まりました。全権委任法を麻生氏は「ナチス憲法」と錯覚したように思われます。

2つ目は「誰も気づかないで変わった」のではありません。全権委任法は騒然とした状態の中で暴力的に成立しています。ヒトラー内閣は1933年1月30日に成立しますが,ナチスの議席は196/584で,過半巣にも至っていません。それで,2日後に解散されます。選挙期間中の2月27日に「国会放火事件」(「ナチスによる陰謀」が定説)起こります。ナチスはこれを共産党の蜂起の始まりと断定し,多数の国家議員逮捕を含む共産党,社会民主党への大々的な弾圧をはかりました。

にもかかわらず,3月5日の選挙の結果,ナチスは前回よりも92議席増の288議席を獲得しますが,全647議席の過半数にも至りません。国家人民党(52議席)との連立でようやく過半数になりました。ここからナチスによる「未曾有」の展開が始まります。3月9日に共産党を非合法化し,共産党の81議席は抹消されます。補充選挙はありません。これでナチスは単独で過半数を占めた事になります。さらに,全権委任法採決時には社会民主党の国会議員26名は逮捕されており,議場にはいませんでした。「誰も気づかないで」とはほど遠い状況でした。

歴史に無知な麻生氏に誰かが教えたのでしょう,彼はきょう発言を撤回しました。朝日新聞によれば次のいいます。

「(発言が)私の真意と異なり誤解を招いたことは遺憾だ」と述べたうえで、「憲法改正については落ち着いて議論することが極めて重要だと考えている。この点を強調する趣旨で、喧騒(けんそう)にまぎれて十分な国民的議論のないまま進んでしまった悪(あ)しき例として挙げた」と説明した。

「あの手口に学んだらどうかね」はどう考えても「悪しき例として挙げた」とはなりません。それは麻生発言の詳細をみればはっきりとしています。

しかし,時事通信によれば,橋下大阪市市長は麻生発言を反語とはせず,正しく理解したようです。彼は「かなり行き過ぎた,ちょっと度のきついブラックジョーク」ではあるが,「(前後の文脈から)ナチスドイツを正当化した発言では決してない。国語力があれば、すぐ分かる」と正直に反応しています。

橋下市長の国語力はどうも特異なようです。
[PR]

by gakis-room | 2013-08-01 18:00 | つれづれに | Comments(4)
Commented by saheizi-inokori at 2013-08-01 21:21
もう何をかいわんや、ですね。
国際会議ではいったいどんなやり取りをしているのでしょうか。
官僚の振り付けのない場面が恐ろしい。
Commented by gakis-room at 2013-08-02 06:57
saheiziさん,
ファッションだけで,口数はほとんどなかったりして(笑)。
Commented by saheizi-inokori at 2013-08-02 10:12
もしかして解釈改憲を意識してるのでしょうか。そんな深謀遠慮でもなさそうですね。
Commented by gakis-room at 2013-08-02 11:20
saheiziさん,
法制局長官の人事には集団的自衛権について解釈改憲の準備との説もありますが,
彼には深謀遠慮はなさそうです。
それにしても,「宏池会→河野グループ→麻生派」という系譜が私には理解しかねます。


<< 前半は異常な暑さでした,7月の気温      戦争絶滅受け合い法案 >>