2013年 07月 31日
戦争絶滅受け合い法案
昨日の毎日新聞に寄れば,安倍首相は「集団的自衛権」について,「わが国を防衛するための必要最小限度の範囲を超えるもので、憲法上許されない」(1981年政府答弁書)という政府見解を見直すつもりのようです。先日の東南アジア訪問時に,このことについてマレーシア,シンガポール,フィリピンの首脳に説明したとのことです。

それで,唐突ですが,長谷川如是閑が1929年(昭和4年)に雑誌「我等」で紹介した,デンマークのフリッツ・ホルム陸軍大将の「戦争絶滅受合法案」を思い出しました。フリッツ・ホルム陸軍大将なる人物が実在していたのか,実在していたとしてもこの法案を本当に提案したのかは不明です。また,これは長谷川如是閑の創作説との説もあります。

「戦争絶滅受合法案」

 世界戦争(注:第1次世界大戦のこと)が終つてまだ十年経つか経たぬに、再び世界は戦争の危険に脅かされ、やれ軍縮条約の不戦条約のと、嘘の皮で張つた太鼓を叩き廻つても、既に前触れ小競り合ひは大国、小国の間に盛に行はれてゐる有様で、世界広しと雖も、この危険から超然たる国は何処にある? やゝその火の手の風上にあるのはデンマーク位なものだらうといふことである。
 そのデンマークでは、だから常備軍などゝいふ、廃刀令以前の日本武士の尻見たやうなものは全く不必要だといふので、常備軍廃止案が時々議会に提出されるが、常備軍のない国家は、大小を忘れた武士のやうに間のぬけた恰好だとでもいふのか、まだ丸腰になりきらない。
 然るに気の早いデンマークの江戸ツ子であるところの、フリツツ・ホルムといふコペンハーゲン在住の陸軍大将は、軍人ではあるがデンマーク人なので、この頃「戦争を絶滅させること受合ひの法律案」といふものを起草して、これを各国に配布した。何処の国でもこの法律を採用してこれを励行したら、何うしたつて戦争は起らないことを、牡丹餅(ぼたもち)判印で保証すると大将は力んでゐるから、どんな法律かと思へば、次ぎのやうな条文である。

「戦争絶滅受合法案」
 戦争行為の開始後又は宣戦布告の効力の生じたる後、十時間以内に次の処置をとるべきこと。
即ち左の各項に該当する者を最下級の兵卒として召集し、出来るだけ早くこれを最前線に送り、敵の砲火の下に実戦に従はしむべし。
  一、国家の××(元首)。但し△△(君主)たると大統領たるとを問はず。尤も男子たること。
  二、国家の××(元首)の男性の親族にして十六歳に達せる者。
  三、総理大臣、及び各国務大臣、并に次官。
  四、国民によつて選出されたる立法部の男性の代議士。但し戦争に反対の投票を為したる者は之を除く。
  五、キリスト教又は他の寺院の僧正、管長、其他の高僧にして公然戦争に反対せざりし者。
 上記の有資格者は、戦争継続中、兵卒として召集さるべきものにして、本人の年齢、健康状態等を斟酌すべからず。但し健康状態に就ては召集後軍医官の検査を受けしむべし。

 上記の有資格者の妻、娘、姉妹等は、戦争継続中、看護婦又は使役婦として召集し、最も砲火に接近したる野戦病院に勤務せしむべし。

 これは確かに名案だが、各国をして此の法律案を採用せしめるためには、も一つホルム大将に、「戦争を絶滅させること受合の法律を採用させること受合の法律案」を起草して貰はねばならぬ。

                                          (一九二九、一、一)

発表時には文中の××と△△の部分は伏せ字だったようです。

「すめらみことは戦ひに おほみずから出でまさね」という与謝野晶子の「君死にたまふことなかれ」と同じです。ところで,開戦と共に戦場(前線)に赴いた国家元首は,私の知るところでは普仏戦争(1870〜1871)時のナポレオン三世が最後かと思います。とまれ,この法案が成立し,開戦とともにこの法案が発動されとしたら,一体誰が戦争終結をするのかという疑問が残りますが,それでも,このところ元気旺盛な「国益至上主義」者や「毅然論」者に,「あんたが真っ先に前線従軍を志願しますか」と聞いてみたい気もします。
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by gakis-room | 2013-07-31 18:00 | つれづれに | Trackback | Comments(2)
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Commented by saheizi-inokori at 2013-07-31 21:35
この法案は真剣に広めることをが必要ですね。
具体名を現日本にして。
Commented by gakis-room at 2013-08-01 08:46
saheiziさん,
長谷川如是閑は大阪朝日新聞の元社会部長でしたから,
その縁で朝日新聞あたりが大々的に取り上げてくれないかと思ったりします。


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