2013年 01月 17日
気になる「今月今夜の月」
d0006690_19144459.jpgきょうの月を「今月今夜の月」と言うのだそうです。由来は尾崎紅葉の金色夜叉です。主人公の貫一が熱海の海岸で,貫一を裏切った恋人のお宮に以下のように言います。

宮(みい)さん,
こうして二人が一処に居るのも今夜ぎりだ。
一月の十七日、宮さん、善く覚えてお置き。
来年の今月今夜は、貫一は何処でこの月を見るのだか! 
再来年(さらいねん)の今月今夜……十年|後《のち》の今月今夜……一生を通して僕は今月今夜を忘れん、忘れるものか、死んでも僕は忘れんよ!
可いか、宮さん、一月の十七日だ。来年の今月今夜になつたならば、僕の涙で必ず月は曇らして見せるから(青空文庫「金色夜叉」より)

恋人の名前は宮(みや)だと思っていましたが,宮(みい)のようです。また女性を足蹴にする暴力的な貫一と別れたのは正解だったかも知れません。

それはともかくも,気になるのは「1月17日の月」です。1月17日の夜の曇り空を「貫一曇り」と言うそうですが,この「1月17日の月」は新暦なのでしょうか,それとも旧暦なのでしょうか。金色夜叉は1897年(明治30年)1月から読売新聞に連載されました。1973年(明治6年)に新暦が採用されてから24年後のことです。

  1897年1月17日=旧暦(前年の)12月15日

旧暦15日ですからほぼ満月です。ほぼ満月ですから,「涙で曇らせる」は立派な決めぜりふです。これが三日月であればシャレにもなりません。尾崎紅葉はこの「1月17日の月」を新暦として書いたのでしょうか。新暦であれば「1月17日の月」は年ごとに変わります。

 (来年)  1898年1月17日=旧暦(前年の)12月25日→月はほぼ三日月の逆
 (再来年) 1898年1月17日=旧暦(前年の)12月6日→月は三日月から3日後
 (10年後) 1898年1月17日=旧暦(前年の)12月4日→月は三日月の翌日

旧暦であれば,何時の年でも1月17日はほぼ満月の2日後です。1897年の旧暦1月17日は新暦2月18日です。帝国大学中退の尾崎紅葉は日常的には旧暦を意識していたのでしょうか。

1月17日にしても,2月18日にしても,二人が散歩する熱海海岸を尾崎紅葉は「寄せては返す波の音も眠げに怠りて、吹来る風は人を酔はしめんとす」と書いていますが,寒すぎやしないかとは,無粋な私の独り言です。
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by gakis-room | 2013-01-17 18:00 | つれづれに | Comments(0)


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