2010年 11月 21日
一票の格差,あるいは参議院とは何か
d0006690_17202255.jpgきょうの朝日新聞の朝刊に掲載された「一人一票実現国民会議」による全面広告です。私にはこの意見広告が,「一票の格差をめぐる訴訟」で現行の格差5倍を違憲とした東京高裁判決(午前の別の訴訟では合憲)を受けてのようにみえますが,定かではありません。この「国民会議」がどの様な組織かは私には不明ですが,発起人には高名な評論家,弁護士,元裁判官等が名を連ねています。

「国民会議」意見広告は今年の参院選選挙区について,「鳥取の選挙権を1票(議員1人当たりの有権者数)とすると北海道,神奈川,大阪,福岡は0.2票」となり,この不条理をなくすべきだとしています。そうでなければ「向こう30年間(なぜ30年後なのかは不問になっています),『1人一票』の保障のもとに多数の人口が行政を支配している競争相手国(米国,韓国等)に伍していくことは困難」と警告しています。

杜撰な意見広告です。韓国は一院制です。そして,米国は二院制です。米国の上院・下院は対等とされていますが,実質的には上院が優位の位置にあります。その上院は人口に関係なく,各州2名の議員を選出しますが,最大人口のカリフォルニアと最小人口のワイオミングとの格差は,5倍どころか68.6倍の格差があります。

それはともかくも,5倍の格差を違憲とした17日の東京高裁判決が最高裁で否定されることを前提に,「否定した最高裁裁判官を国民審査で罷免せよ」というのが意見広告の趣旨のようです。国民審査を活用することを「大発見」としていますが,笑ってしまいました。

それはともかくも,2006年10月4日に最高裁大法廷が「1票の格差,5.13倍」を合憲としたときに「参議院あるいは二院制とは何だろうか」の中で,私は以下のように書きました。

はたして都道府県を単位として上で,1票の格差を限りなくゼロに近づける改革案はあるのでしょうか。格差ゼロを前提にすれば,都道府県を単位として,現在の参議院の定数を3倍以上にするか,逆に都道府県単位を廃止して複数の県を合区するか,ブロック制にする以外にはないようです。あるいはアメリカの上院が1票の格差を全く問題にしないように,参議院に現行とは異なる意味づけをすることもできます。

今もこの考えは変わっていません。そして,YUKI-archさんのコメントに対して「参議院は比例代表だけにしたら」と冗談めかして書いています。

「国民会議」のホームページでは格差の解消のために衆議院では複数県の合区,参議院ではブロック制を「資料」として掲げています。また,17日の東京高裁判決は「合区」を示唆していますが,これについて,朝日新聞と産経新聞が似たような社説(主張)を掲げています。

朝日新聞(11月19日)
たとえば衆院が小選挙区を基本とするなら、参院は比例区のみにするのも一案だ。これなら衆院が2大政党中心となっても、少数政党は参院で勢力を保てる。参院は2大政党の激突とは異なる構図となり、与党が過半数を得られなくとも様々な相手と連携しうる。

産経新聞(11月21日)
衆院が比例代表の定数削減をさらに進め、選挙区中心の制度になっていくことを前提とすれば、参院では都道府県をまたぐブロックごとの選挙区の導入や、比例代表一本の制度なども検討してみるべきだろう。

「1票の格差」の解消は技術的なことだけでなく,「参議院とは何か」を問うことがより根源的であるように思われます。憲法ではどちらも「全国民を代表する選挙された議員で構成する」(43条)としています。アメリカ,ドイツの第2院は国民代表ではなく,州の代表です。また,イギリスは貴族院の伝統を受け継いでいます。

※写真はクリックすると拡大します。
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by gakis-room | 2010-11-21 19:02 | つれづれに | Trackback | Comments(0)
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