2009年 12月 14日
天皇の政治利用
天皇と中国の習近平国家副主席との会見について,「天皇の政治利用」ではないかとの批判があります。この手の批判については産経新聞に限ります。産経新聞の12日の「主張(社説)」は以下のように主張しています。

民主党の小沢一郎幹事長が鳩山首相に会見の実現を働きかけ、首相が平野博文官房長官に会見を実現できないかの検討を指示したという。

鳩山内閣がルールを無視してまで中国の要求を受け入れたことは、中国側に「日本には無理を言えば通る」とのメッセージを与え、今後の対中交渉で足元を見透かされる恐れがある。露骨な「二元外交」も問題だ。鳩山内閣には再考を求めたい。


要するに「天皇と外国要人との会見は,1カ月前までに文書で正式申請するのがルール」であるのに,小沢民主党幹事長が「ルール無視のごり押し」をした,その結果としての会見は中国に「日本には理不尽さが通る」思わせたということのようです。

産経新聞の「主張」は宮沢内閣時の天皇の中国訪問についても以下のように言います。

陛下は天安門事件から3年後の平成4(1992)年10月、中国を訪問された。中国が西側諸国から厳しく批判されている時期で、当時の宮沢内閣が多くの国民の反対を押し切って、半ば強引に推し進めたものだった。
 天皇ご訪中が結果的に、西側諸国による対中制裁の緩和につながり、政治利用されたことは、当時の中国外相の回顧録などで明らかになっている。


この文脈の「政治利用」した主体は当然宮沢内閣ということになりますが,宮沢内閣が西側諸国の政治的思惑に反してまで,天皇を政治利用しなければならなかった理由を是非明らかにしてほしかったと思います。単に「中国に乗せられた」というのでしょうか。

ところで,私には時の内閣による「天皇の政治利用」が常態のように思われます。天皇を政治利用しなかった内閣がかつてあったでしょうか。問題はあからさまか,そうでないかという違いだけののように思われます。とりわけ外国訪問はすべて「天皇の政治利用」のように思われます。

第7条 天皇は,内閣の助言と承認により,国民のために,左の国事に関する行為を行ふ。
1.憲法改正,法律,政令及び条約を公布すること。
2.国会を召集すること。
3.衆議院を解散すること。
4.国会議員の総選挙の施行を公示すること。
5.国務大臣及び法律の定めるその他の官吏の任免並びに全権委任状及び大使及び公使の信任状を認証すること。
6.大赦,特赦,減刑,刑の執行の免除及び復権を認証すること。
7.栄典を授与すること。
8.批准書及び法律の定めるその他の外交文書を認証すること。
9.外国の大使及び公使を接受すること。
10.儀式を行ふこと。

ここには外国訪問はありません。訪問先については,すべて天皇の個人的な願望によるとでもいうのでしょうか。その時々の国際情勢の中で「内閣が助言と承認」をしているのでしょうから,「内閣の外交利用」つまりは「政治利用」としか思われません。

また,外国からの要人との会見は憲法のいう国事行為としての「儀式」なのでしょうか。要人の来日そのものが内閣の政治・外交であり,天皇と要人の会見はそのための「儀式」のように思われます。「皇室外交」なるものはすべて「天皇の政治利用」であると私は思っています。
[PR]

by gakis-room | 2009-12-14 20:48 | つれづれに | Trackback(2) | Comments(6)
トラックバックURL : http://gakisroom.exblog.jp/tb/10558942
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
Tracked from ガラス瓶に手紙を入れて at 2009-12-15 08:42
タイトル : *〔しーたろう〕の宮内庁等へ送信した意見書文例公開*
※一阿さまのお話の途中でございますが、〔しーたろう〕が管理する別サイトで、http://sitarou09.blog91.fc2.com/下記の件の周知拡散ならびに意見書文例アップの要請がございましたので、急遽この記事を掲載させて頂きました。... more
Tracked from ガラス瓶に手紙を入れて at 2009-12-15 14:56
タイトル : 一阿のことば 17
※皆さまへご連絡12月15日、天皇陛下と中国副主席の会見が行われてしまいました。引き続き、政府への意見を送付したいというご要望がありますため、14日、一つ下の記事*〔しーたろう〕の宮内庁等へ送信した意見書文例公開*に公開した「会見中止を求める意見書」を改訂し、「会見後の意見書」として再公開いたします。ご参照頂けましたら幸いです。  〔しーたろう〕... more
Commented by 高麗山 at 2009-12-15 00:56 x
第7条の10を国事行為と切り離せば、相当時間的にも身体的負担も軽減されるように思うのですが。
理由は、儀式そのものが神道と濃厚な関係を持つ、皇室の私的な儀式がほとんどと思われ、深夜に行われる儀式は体力的にも厳しそうで「公的行為」との関係がきわめて稀薄であるように思います。
小沢幹事長の、談話もある面では的を射ていたように思います!
Commented by gakis-room at 2009-12-15 08:05
高麗山さん,
件の深夜の宗教的儀式は憲法のいう「儀式」ではなく,純粋な私的行為だと思います。
「儀式」とは新年祝賀会とか,園遊会などのことでしょうか。
国事行為として圧倒的に多いのは,内閣上奏書などへの署名や押印の件数で,89年から08年までの間に計2万2377件になります
また,公的行事とされる国内外の訪問は,この10年間に国内訪問計257件、外国訪問は32カ国になります。
Commented by saheizi-inokori at 2009-12-15 09:44
もやっとしていた考えを整理していただきました。賛成!
Commented by gakis-room at 2009-12-15 17:51
saheiziさん,
「天皇陛下,皇后両陛下ご動静」を,大き目の活字で毎日報じている産経新聞の苛立ちが愉快です。
Commented by convenientF at 2009-12-16 04:57
「皇室」が政治機能の一つであることは確かであり、これまで利用されてきているわけですが、交通機関や消防だって利用には一定のルールが定められています。

今回の小沢発言は、その表現が多くの国民の反発を買いますわな。
Commented by gakis-room at 2009-12-16 11:52
CFさん,
3年前の12月14日,イラク派遣部隊や外務省関係者ら180人を皇居に招いて「ご苦労さん会」が行われましたが,これこそが究極の政治利用かな思います。


<< 不思議な内閣・最近の鳩山内閣の...      「けったいな気温」も終わったよ... >>